Raspberry Piシリーズの最新モデル「Raspberry Pi 5」。(2024年12月現在)これまでのモデルと比較して大幅な性能向上を実現し、SNSでも大きな注目を集めています。
特に、DIYプロジェクトや学習用途、そしてエッジAIデバイスとしての利用を想定した設計は、多くのユーザーの期待に応える仕上がりとなっています。
本記事では、Raspberry Pi 5のスペックや魅力を徹底解説し、旧モデルや他のマイコンボードを超える選択肢としておすすめする理由をお伝えします。
これからRaspberry Piを使ってみたいと思っている方は是非参考にしてみてください。
Raspberry Pi 5ってどんな製品?
2023年10月に登場した最新モデル「Raspberry Pi 5」。
従来モデルを遥かに超える性能と多機能性を兼ね備えたこのボードコンピュータは、DIY愛好者やプログラミング初心者からプロのエンジニアまで、幅広いユーザーに注目されています。
Raspberry Pi 5のスペック
Raspberry Pi 5のスペックは以下の通りです。
AIアプリケーションの実装も視野に開発され、マイコンボードとしては非常にハイスペックな仕様となっています。
項目 | 仕様 |
---|---|
CPU | Broadcom BCM2712、Arm Cortex-A76 クアッドコア 2.4GHz |
GPU | デュアルコア VideoCore VII、OpenGL ES 3.1およびVulkan 1.2サポート |
メモリ | 2GB、4GB、8GBのLPDDR4X-4267 SDRAM |
ストレージ | microSDカードスロット(UHS-I SDR104対応)、PCIe 2.0 x1経由のNVMe SSD対応 |
USBポート | USB 3.0 ×2、USB 2.0 ×2 |
映像出力 | マイクロHDMI ×2(デュアル4K@60fps対応) |
ネットワーク | ギガビットイーサネット、802.11ac Wi-Fi、Bluetooth 5.0 BLE |
GPIO | 40ピンGPIOヘッダー |
電源 | USB Type-C、5V/3A(最低要件)、5V/5A(推奨、USB PD対応) |
サイズ | 85mm × 56mm × 17mm |
その他の機能 | RTC(リアルタイムクロック)機能、PCIe 2.0 x1ポート、専用ファンコネクタ |
Raspberry Pi 5の外観
ここからはRaspberry Pi 5の外観について見ていきます。
メインSoC
基板中央に配置されているシルバーのチップがメインSoCです。
Raspberry Pi 5のメインSoCであるBroadcom BCM2712は、前モデルのBCM2711から大幅な進化を遂げています。このSoCは、2.4GHzで動作するクアッドコアのArm Cortex-A76 CPUを搭載し、前モデルの1.5GHzのCortex-A72と比較して、クロック速度が約60%向上しています。これにより、全体的な処理性能が大幅に強化され、より高度なタスクやマルチタスク処理が可能となりました。
また、グラフィックス処理を担当するVideoCore VII GPUを内蔵しており、OpenGL ES 3.1およびVulkan 1.2をサポートしています。これにより、デュアル4Kディスプレイでの60fps出力が可能となり、マルチメディアアプリケーションや高解像度ビデオ再生において、より滑らかで高品質な表示が実現します。
製造プロセスにおいても、BCM2712は16nmプロセスで製造されており、前モデルの28nmプロセスと比較して、電力効率と性能の両面で改善が見られます。これらの進化により、Raspberry Pi 5はデスクトップ用途からエッジコンピューティング、マルチメディア処理まで、幅広いユースケースに対応できる強力なプラットフォームとなっています。
GPIO
以下の写真の手前に映っているのが40PinのGPIOです。
Raspberry Pi 5のGPIO(General Purpose Input/Output)は、従来モデルと同様に40ピンのヘッダーを備え、デジタル信号の入出力や各種通信プロトコル(I²C、SPI、UART)に対応しています。これにより、センサーやアクチュエーターなどの外部デバイスとの接続が可能で、電子工作やプロトタイピングに広く利用されています。
しかし、Raspberry Pi 5ではGPIOの制御方式に重要な変更が加えられています。従来のモデルでは、SoC(System on Chip)が直接GPIOを制御していましたが、Raspberry Pi 5では新たに導入されたRP1という専用コントローラーがGPIOの制御を担当しています。RP1は、USBや有線LANの通信も管理するチップセットで、SoCとはPCIeバスで接続されています。この構造変更により、GPIOの制御信号がRP1を経由することになり、従来よりも若干の遅延が生じる可能性があります。具体的には、RP1とホストプロセッサー間のPCIeリンクが約1マイクロ秒の遅延を挿入することが設計上想定されています。
また、この変更に伴い、従来のGPIO制御ライブラリであるRPi.GPIOやpigpioがRaspberry Pi 5では利用できなくなっています。そのため、PythonでGPIOを制御する際には、Raspberry Pi公式が推奨するgpiozeroライブラリの使用が推奨されています。gpiozeroは、RPi.GPIOと比べて高レベルな抽象化が施されており、初心者にも扱いやすい設計となっています。
USBポート・LANポート
以下の写真がUSBポートとLANポートです。
Raspberry Pi 5では、USBおよびLANポートの設計が大幅に改善され、データ転送速度と接続の柔軟性が向上しています。USBポートは、2つのUSB 3.0ポートと2つのUSB 2.0ポートを備えており、特にUSB 3.0ポートは独立したコントローラーに接続されています。これにより、同時に高帯域幅を必要とするデバイスを接続しても、速度低下が最小限に抑えられます。
一方、LANポートはギガビットイーサネットに対応し、HDMIポート側に配置されています。この配置は、Raspberry Pi 3B+以前のモデルと同様で、ケーブル管理が容易になっています。これらの改善により、Raspberry Pi 5はデータ転送速度の向上と接続性の強化を実現し、さまざまなプロジェクトや用途での柔軟性が高まっています。
HDMIポート・電源ポート・カメラポート
Raspberry Pi 5は、ユーザーの利便性と機能性を高めるため、HDMIポート、電源ポート、カメラポートにおいて以下の特徴と変更を備えています。
HDMIポート: Raspberry Pi 5は、デュアルディスプレイ出力を可能にする2つのマイクロHDMIポートを搭載しています。これにより、最大4K解像度でのデュアルディスプレイ出力が可能となり、マルチタスクや高解像度コンテンツの表示に適しています。ただし、標準的なHDMIポートではなくマイクロHDMIポートであるため、接続にはマイクロHDMI対応のケーブルや変換アダプターが必要です。特に、左側のポートに接続すると電源ケーブルと干渉する可能性があるため、右側のポートを使用することが推奨されています。
電源ポート: 電源供給にはUSB Type-Cポートを採用しており、5V/3Aの電源が最低要件とされていますが、安定した動作のためには5.1V/5Aの電源アダプターの使用が推奨されています。
カメラポート: Raspberry Pi 5は、デュアルカメラやデュアルディスプレイの接続を可能にする2つのMIPI(4レーン)ポートを備えています。これにより、複数のカメラモジュールやディスプレイを同時に接続・使用することができます。ただし、これらのポートは新しいコネクタを使用しており、旧モデル用のケーブルは物理的に接続できません。そのため、既存のカメラモジュールを使用する場合は、専用のケーブルを用意する必要があります。
PCIeコネクタ・電源ボタン
最後に紹介するのは以下のPCIeコネクタと電源ボタンです。
Raspberry Pi 5は、ユーザーの利便性と拡張性を高めるため、PCIeコネクタと電源ボタンに新たな機能を導入しています。
PCIeコネクタ: Raspberry Pi 5は、シリーズ初となるPCI Express(PCIe)接続に対応しています。これにより、M.2 SSDなどの高速ストレージデバイスや、USBポート増設カード、有線LANポート増設カードなど、多様なPCIe拡張カードを接続することが可能となりました。特に、M.2 SSDを接続して起動ディスクとして使用することで、システム全体のパフォーマンスを向上させることができます。
電源ボタン: Raspberry Pi 5には、シリーズで初めて物理的な電源ボタンが搭載されました。このボタンは、システムの起動やシャットダウンを手軽に行うためのものです。通常、電源を接続すると自動的に起動しますが、シャットダウン後に待機電源が供給されている状態では、電源ボタンを押すことで再起動が可能です。
徹底比較:Raspberry Pi 5 vs 旧モデル(Raspberry Pi 4以前)
Raspberry Pi 5は、以下のポイントで旧モデルを圧倒します:
性能アップ
- CPU性能:Raspberry Pi 5は最大3.0GHzのクアッドコアプロセッサを搭載し、Raspberry Pi 4に比べて最大2倍の処理速度を実現。
- メモリ:最大8GBのLPDDR4Xメモリで、大規模なプロジェクトも余裕で処理。
- ストレージ速度:PCIe接続のSSD対応で、ストレージ速度が大幅向上。OSの起動やアプリの読み込みが一瞬で完了します。
使いやすさの向上
- デュアル4K出力:複数モニタでの作業がさらに便利に。
- USB 3.0ポート増加:高速データ転送が可能。
- 冷却性能の改善:ヒートシンクやファンを取り付ければ長時間の使用も安心です。
Raspbery Pi 5の有効な活用方法
ここからはRaspberry Pi 5の性能を活かした有効な活用方法についていくつか紹介します。
AIおよび機械学習プロジェクト
- ユースケース: エッジAIデバイスとしての活用
- 物体検出、顔認識、音声認識などのリアルタイム推論。
- TensorFlow LiteやPyTorchを用いた小規模なモデルの動作。
- 性能向上のポイント: GPU性能の強化により、AI推論の速度が向上。PCIe対応により外部AIアクセラレータ(例: Raspberry Pi AI Kit)の接続が容易に。
Raspberry Pi公式から発売されたRaspberry Pi AI Kitを装着することで、専用のNPUを使って超高速にAIの推論処理を実行することができます。
AI KitにはHATに搭載されたHailo 8L AIアクセラレータとピンヘッダ、スペーサーなどが付属しています。
Hailo 8L AIアクセラレータのチップです。
このHATを装着するとAIの推論処理がHailo 8Lのハードウェア演算器で高速に処理されます。そのためRaspberry Pi 5側のCPUは別の処理を並列実行できるようになります。
Hailo 8L AIアクセラレータの使用方法については以下の記事で解説しています。
メディアサーバーおよびストリーミング
- ユースケース: 高解像度動画の再生と配信
- PlexやKodiを利用した家庭用メディアサーバー。
- デュアル4Kモニタ対応を活用したマルチディスプレイ出力。
- 性能向上のポイント: GPUのアップグレードにより、H.265(HEVC)エンコード/デコードの処理がスムーズに。
IoTおよび産業用用途
- ユースケース: センサーデータのリアルタイム処理と制御
- スマートホームデバイスやセンサー制御。
- 工場や研究施設でのデータ収集やプロトタイプ作成。
- 性能向上のポイント: 高速なI/O(USB 3.0、PCIe)が、リアルタイム性を要求されるデバイス接続に対応。
おすすめの周辺機器:Raspberry Pi 5を最大限活用するために
Raspberry Pi 5の性能を最大限活用するためには、周辺機器の選択も重要です。
この項目では私も実際に使用しているおすすめの周辺機器を紹介します。
ケース
Raspberry Pi 5では発熱が大きいためヒートシンクが必要となります。
そのため冷却性能を考慮した専用ケースがおすすめです。
当サイトでは構成のケースPironman5について以下の記事で解説しています。
電源アダプタ
電源アダプターは5.1V/5Aの物が推奨されいています。
AmazonなどでもRaspberry Pi 5向けの様々なアダプタが販売されており、製品によってON/OFFスイッチを搭載しているものなどもありますので、予算と使い勝手で選択してみてください。
私は以下のRasTechというブランドの電源を使用しています。
高速SDカード
SanDiskやSamsung製がおすすめです。
SSD
Raspberry Pi 5ではPCIeの高速バスに初めて対応し、外部の高速ストレージを接続できるようになりました。
カメラを使用したアプリケーションなどを開発する場合は、撮影した動画データを高速に書き込めるストレージが必要となります。また、メディアサーバーとして使用する場合などについてもSSDがおすすめです。
M.2のSSDなどを接続する場合は、HATなどの拡張スロットが必要となります。
私はLexarのSSDを使用しています。NASなどで使用する場合は大容量のタイプがおすすめです。
Raspberry Piを使ったIoTアプリ開発を効率よく学ぶには?
Raspberry Piを使ったIoTシステムの構築を学びたい方にはUdemyの以下の講座がおすすめです。
Raspberry PiとPythonでIoTはじめの一歩~IoTキッチンガーデン講座~まとめ:Raspberry Pi 5は誰におすすめ?
Raspberry Pi 5は、初心者から上級者まで、あらゆるユーザーに新しい可能性を提供する革新的なボードコンピュータです。
その圧倒的な性能向上と汎用性の高さは、DIYプロジェクトや学習、さらにはプロフェッショナルな開発環境に至るまで、幅広い用途で活躍することでしょう。
特に、旧モデルからの買い替えや初めてRaspberry Piを手に取る方にとって、このモデルは間違いなく満足のいく選択です。
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それでは、また次の記事でお会いしましょう。
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