Raspberry Pi 5がPCIeバスに対応したことで、大容量のSSDストレージを2つ接続しRAIDを構成できる点は、ストレージの信頼性と性能向上に大きく寄与します。
RAID 1を利用すれば、データをミラーリングして保存することで障害時の復旧性が向上し、バックアップの手間を軽減できます。これにより、Raspberry Piが低コストながらも小規模サーバーやNAS、エッジコンピューティング用途で活躍する可能性が広がります。
今回はRaspberry Pi 5でRAIDを構築する手順について解説します。
RAIDとは
RAID(Redundant Array of Independent/Inexpensive Disks)は、複数のストレージデバイスを組み合わせて、データの冗長性や性能向上を実現する技術です。この記事では、Raspberry Pi 5とNVMe拡張ボードを使用して、データの冗長性を高めるRAID 1(ミラーリング)を構築する手順を解説します。
RAID 1は、2台のストレージに同じデータを保存することで、1台が故障してもデータを失わない仕組みを提供します。
必要な準備
まず、今回のRAID構築に当たり用意した環境を解説します。
使用するハードウェアとソフトウェア
- ハードウェア:
- Raspberry Pi 5
- NVMe拡張ボード(NVMeスロットを2つ搭載)
- 2つのM.2 NVMe SSD(同じ容量がおすすめ)
- ソフトウェア:
- Raspberry Pi OS
今回はPCIeバスを搭載し、外部の大容量ストレージと高速にデータ転送が可能になったRaspberry Pi 5を使用します。
外部ストレージにはLexarのNM620 M.2 2280 PCIe Gen3x4 NVMe SSDを2つ用意しました。
最大リード3500MB/s、ライト2400MB/sの速度で大容量データを高速転送できます。
必要なツール
RAID構築には、LinuxのRAID管理ツールであるmdadm
を使用します。
RAID構築の全体的な流れ
- 必要なパッケージをインストールする。
- SSDを初期化する。
- RAIDアレイを作成する。
- RAIDデバイスをフォーマットしてマウントする。
- 再起動後もRAIDを自動マウントする設定を行う。
- 構築後の動作を確認する。
RAID構築の手順
手順1: 必要なパッケージのインストール
まず、RAID管理ツールmdadm
をインストールします。ターミナルで以下を実行してください。
sudo apt update
sudo apt install mdadm
インストールが完了したら、以下のコマンドでバージョンを確認しておきましょう。
mdadm --version
手順2: SSDの確認と初期化
RAID構築前に、接続されたSSDがシステムに認識されているか確認し、必要に応じて初期化を行います。
接続されたSSDを確認
以下のコマンドで接続されたデバイスを確認します:
lsblk
出力に/dev/nvme0n1
や/dev/nvme1n1
が表示されていることを確認してください。
既存のパーティションを削除
RAIDアレイを作成するため、既存のパーティションを削除します。「nvme0n1」の部分は必要に応じて変更してください。
sudo parted /dev/nvme0n1
次に、以下を入力します:
(parted) rm 1
(parted) quit
同様に、/dev/nvme1n1
についても削除を行います。
手順3: RAIDアレイの作成
RAIDアレイを作成するには、mdadm
コマンドを使用します。
RAIDアレイを作成
以下のコマンドを実行してください:
sudo mdadm --create --verbose /dev/md0 --level=1 --raid-devices=2 /dev/nvme0n1 /dev/nvme1n1
コマンド実行中に警告が表示される場合がありますが、Y
を入力して続行してください。
RAIDアレイの状態確認
RAIDアレイが正常に作成されたか確認します。
cat /proc/mdstat
手順4: RAIDデバイスのフォーマットとマウント
RAIDアレイを使用するためにフォーマットし、マウントポイントを設定します。
フォーマット
以下のコマンドでRAIDデバイスをフォーマットします:
sudo mkfs.ext4 /dev/md0
マウントポイントの作成
マウントポイントを作成し、RAIDデバイスをマウントします。
sudo mkdir -p /mnt/raid
sudo mount /dev/md0 /mnt/raid
マウント確認
以下のコマンドでマウントを確認します:
df -h
手順5: 再起動後の自動マウント設定
RAIDを再起動後も利用可能にするため、設定を行います。
RAID情報を保存
RAID構成を/etc/mdadm/mdadm.conf
に保存します。
sudo mdadm --detail --scan | sudo tee -a /etc/mdadm/mdadm.conf
sudo update-initramfs -u
自動マウントの設定
/etc/fstab
に以下のエントリを追加します:
sudo nano /etc/fstab
以下を追記:
/dev/md0 /mnt/raid ext4 defaults 0 0
保存して終了します。
手順6: 動作確認
再起動後にRAIDが正しく動作しているか確認します。
RAIDの状態確認
cat /proc/mdstat
自動マウント確認
df -h
RAIDデバイスが/mnt/raid
に正しくマウントされていれば成功です。
トラブルシューティング
RAID構築中や再起動後に問題が発生した場合の対処法をいくつか紹介します。
許可エラーの対処
/etc/mdadm/mdadm.conf
への書き込みでエラーが発生する場合、以下を使用してください:
sudo bash -c "mdadm --detail --scan >> /etc/mdadm/mdadm.conf"
RAIDアレイの手動起動
再起動後にRAIDアレイが認識されない場合:
sudo mdadm --assemble --scan
まとめ
この記事では、Raspberry Pi 5を使用したRAID 1構築の手順を解説しました。
RAIDはデータの安全性を向上させる便利な技術ですが、バックアップの代替ではありません。定期的なバックアップを行い、安全な運用を心がけましょう。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。
コメント